2014/04/28

美術鑑賞

ムサビ通信、東洋美術史は第1課題に超苦労して、第2課題に未だに手を付けられず、しかももし合格できたとしても科目試験が死ぬ程難しいという噂を聞いてへっぴり腰になっていました。

今年度から「美術の歴史と鑑賞」という科目が増設され、それが美術史の必修単位として使えることになったので、履修して、さっそくレポートを出したらすんなりA判定をいただいて、ほっと胸をなでおろしました。

ということで、久々のレポートです。

このレポートに取り組んでるうちはモーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールが頭から離れなかったです…

18世紀における西洋と日本の美人画』

 18世紀、日本は江戸時代で、中国から伝来した画法を極めつつ、独自の画派が誕生した。中でも大衆向けに描かれた浮世絵は、江戸の文化を象徴する画派のひとつである。一方、西洋では王権が強まり、華やかな宮廷文化の時代が終わり、芸術の中心地フランスではバロック芸術から富裕層に向けて描かれた柔かな印象のロココ芸術が流行した。ほぼ同時期に、西洋絵画と日本の浮世絵の主題として多く描かれたのが、女性の肖像である。以下、2つの絵画様式の代表作である菱川師宣作『見返り美人図』とモーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール作『ポンパドゥール夫人の肖像』を鑑賞対象とし、考察、比較する。

 まず、1693年頃に描かれたとされる菱川師宣作『見返り美人図』(東京国立博物館蔵)から考察していく。この作品が生まれた江戸時代は、封建制度が最も完成されたとされる。町人階級が多くおり、大衆文化が発達した。菱川師宣は、当時京大阪で流行していた小説や浄瑠璃の木版技術を使い、遊里吉原を舞台とした歓楽の風俗版画を創始した。それまで絵本の挿絵で敷かなかった浮世絵を独立した1枚絵にし、鑑賞に堪え得る絵画作品にした。師宣は男女の姿態を柔らかい描線で書き出し、人気絵師となった。中でも、浮世絵の代表的な主題である美人画において師宣は人気を博した。浮世絵の美人画は、官許の遊郭、吉原などの遊里にいる女性、遊女や芸者を描いたもの、町の評判娘を描いたもの、理想の美人などが描かれた。それらの顔はどれも一様に似ていることから、当時の江戸の人々がどのような女性が好みだったのかがよくわかる。さらに、この絵の女性は、17世紀末期当時の流行であった女帯の結び方「吉弥結び(きちやむすび)」と、紅色の地に菊と桜の刺繍を施した着物を身に着けている。それらを美しく見せる演出法として、歩みの途中で後方に視線を送る姿で描かれたものと考えられる。このように、浮世絵は当時の風俗を知る上で重要な資料でもある。浮世絵は大衆のための絵画で、木版による大量生産で作られていた。絵師が下絵を描き、彫師が下絵をもとに版を彫り、摺師が版を紙に摺る、といった分業制をとっていた。一方肉筆画は、富裕層からの依頼で人気絵師が1点ずつ描いたものである。『見返り美人図』は肉筆画である。

 次に1752~55年頃に描かれたとされるモーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール作『ポンパドゥール夫人の肖像』(ルーブル美術館蔵)を考察する。1725年、太陽王ルイ14世の崩御により、壮大で古典文化の伝統に汲んだ主題を表現したバロック様式の建築、絵画、彫刻は、衰退していくこととなった。ルイ14世に代わり幼少のルイ15世が新国王となり、芸術の解放の時代が始まった。軽妙洒落さ、自由奔放さ、親しみやすい日常性、感覚性をもつロココ芸術の始まりである。装飾品はバロック芸術の荘厳とした面持ちとは違い、複雑精妙な曲線からなり、ロカイユ(貝殻、小石を表す形容詞)と呼ばれた。ロココ絵画は創始者アントワーヌ・ヴァトーの『キュテラ島の巡礼』を筆頭に、戸外での男女の恋の戯れを表したフェート・ギャラント(雅な宴)が流行した。『ポンパドゥール夫人の肖像』は、この流行を汲みながら描かれた優雅な肖像画である。モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールはこの肖像画において完璧なパステルの技法を駆使し、才色兼備のポンパドゥール夫人を描いた。この時代の肖像画の特徴は、以下の2点である。一つは、一瞬の動きを与える微笑を好んで表現すること。二つ目は、貴婦人を神話の女神のように見立てて描くことである。芝居や扮装に対するロココ的な好みの表れであると同時に、ギリシャ神話という西洋文明の恒常的要素への暗示によって伝統の結びつきをはかろうとしていた。

 次に、以上の2作品を比較していく。この2作品の共通点は最初に述べた通り、当時の美人を描いたことである。同時代にほぼ交流のなかった西と東の遠い国で、同じ主題が好んで描かれたのはとても興味深いことである。そして肖像画という絵画は富裕層へ向けて描かれていたということだ。相違点は、その描き方である。日本の浮世絵『見返り美人図』は背景が地の色で他はなにも描かれていない。女性は何も持たず、その美しい着物の模様が画面の見所である。しかしながら当時の江戸の流行がよくわかるシンプルで無駄の無い画面である。ロココ絵画『ポンパドゥール夫人の肖像』は貴婦人らしく、装飾されたイスに座り、楽譜のようなものを手に持っている。当時の富裕層の優雅な暮らしが肖像画で想像できる。夫人が着ているドレスは浮世絵同様、当時の流行を表すものであろう。胸にあしらわれたリボン、少しだけ見えるハイヒールなどは当時の流行の最先端であった。ルイ15世の公妾であったポンパドゥール夫人がいかに洗練された人物であったかを示すドレスである。浮世絵とは異なり背景は部屋の様子も描かれているが、夫人が際立つよう暗いブルーで描かれている。浮世絵は岩絵の具で描かれ、平面的な塗りで、陰影は描かれていない。一方ルネサンスを経たロココ絵画は人間、物に立体感をつけた油彩画である。日本において立体的な西洋絵画風の作品が現れるのは鎖国の解かれた明治時代以降である。






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